保護者からの声

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《ただ見守ってくれるだけでいいのです》

あやめ幼稚園を卒園して55年になる。

当時は戦後の復興期で、親は生活することに忙しく、そのぶん現代の子供のように親からのうっとうしいまでの愛情(干渉や保護)からは無縁であった。
子供は目を輝かせて謎にみちた世界を探求するのに夢中であったし、幼稚園もそうした世界の一部であった。

人は幼いときに家族や共同体から「無条件に」愛され受容されることが必要だと言われている。
そのような環境で育った子供は世界を肯定的に受けとめるし、孤立することが怖くない。

幼稚園で遊んだことは覚えているのに、何を教えてもらったのかについては全く記憶がない。しかし先生や仲間から承認され受け容れられたことが、親の愛情とともに、僕の人格の根底を形成していることは確かだろう。
小学校に進学したら役に立つかもしれない知識をつめ込むのではなく、子供が好奇心を思いっきり駆動させて、幼稚園という世界でちいさな冒険や発見を繰り返し、喧嘩や仲直りを通してコミュニケーション能力を磨いていくのをただ見守っている先生がいる、それが幼稚園の原点であろう。
そしてあやめはその原点をしっかり今に受け継いでいると思う。

しかしあやめのもっと大切な伝統はキリスト教精神である。
それは人間をはじめすべてのいのちを生みだし育む「目に見えない大きな存在」に思いをはせることであり、友だち、園に飛来する野鳥や池の鯉、くすの木や背後にそびえるふたば山も大空までも、みんな「神さま」によって生かされているのだということを幼いなりに理解していくことだ。
そのことをこころに刻んだ子供はきっといのちを大切にする人間に育っていくだろうと願いながら、先生は子供たちを見守っているに違いない。

今石正人(1953年度卒園・牛田教会員)